はんだ理論(5)

 金属の組み合わせや温度により、ぬれ性は変わります。 銅と他の金属のぬれ性について下にまとめた表を示します。

 共晶はんだ材料である Pb が Cu とはぬれ性が悪く、もう一つの材料である Sn が Cu と良 くぬれることがわかります。  

 後で述べますが、Cu とはんだの接続は Pb ではなく、Sn が主役となるので、Cu に対して Sn のぬれ性が良いのは好都合です。

 

 線材をはんだ付けする場合や、2 つの金属をはんだ付けする場合は、接続する金属の隙間 にはんだが侵入する必要があります。ぬれ性とも関係しますが、毛管現象(毛細管現象)が 大きく影響します。 下に平行な 2 枚の板への毛管現象による液体上昇のイメージ図を示します。

 2 枚の平行板の間に液体が上昇する高さ H は以下の式で求められます。

 

        H = 2ηcosθ / ρg d    (3)         

 

 (3)式より毛管現象ではんだを金属間に浸透させるためには隙間(d)を小さくすること が重要だということがわかります。

 撚り線のケーブルにおいても隙間を少なく撚ること、そ の線とプラグの隙間を小さくすることで、はんだが浸透しやすくなり良いはんだ付けがで きる作業になることがわかります。

 

 また、線材以外でもはんだが浸透する隙間を残して、隙 間を狭くするほうが、はんだの浸透性が良くなり良いはんだ付けになります。 拡散  はんだの接合は、固体の金属中にはんだが拡散して固体金属と金属間化合物を形成しま す。

 

 一般的に、原子が熱振動により他の格子点に移動することを拡散と言います。 拡散には大きく分けると次の 3 つに分類されます。

 はんだ付け理路(その 3)の図 4 で示したように表面と粒界は結合に関与していない原 子があるので、拡散した金属と結合が容易で拡散もしやすい部分です。  よって、はんだは、まず固体金属表面に広がり、そのうち粒界(結晶と結晶の間)に沿っ て拡散します。結晶となって結合が完結している結晶内への拡散が一番難しい拡散という ことになります。  

 

 拡散は半導体への不純物のドーピングなどを理解するうえで重要となる項目です。残念 がら、はんだでは拡散について半導体ほど詳しく研究されていません。そのために、次回は 半導体の例を基にした、」拡散を理解する為の基本となる“Fick”の法則について説明してい きます。